気づけば“管理職候補”になっていた僕の話
28歳で入社して7年目。営業としてある程度の成果を出し、社内での立ち位置も安定してきた。
ただ、自分の中ではずっと「現場が好き」で、管理職になるイメージはあまりなかった。
それでも、年次が上がるにつれて、「そろそろチームを持たせようか」という話がちらほら出てくる。
はっきり断ったわけではないが、「もう少しプレイヤーでいたい」という気持ちはずっとあった。
けれど、社内の空気は変わっていく。
特に中小企業では、明確な昇進基準よりも“順番”が先に来る。
そうして、気づけば「次はお前だろうな」と言われる立場になっていた。
最初は「ちょっとまとめておいて」で始まった
最初の変化は、「新人の指導、お願いしていい?」からだった。
そのうちに「チーム全体のスケジュール、ちょっと見ておいてくれる?」と頼まれるようになる。
気づけば、報告チェックや育成、簡単なマネジメントまで担当していた。
一応リーダー的な立ち位置。でも、正式な役職ではない。
こういうのって、一度引き受けると後には引けない。
まわりからの評価も、「あいつに任せておけば安心」になる。
自分でも、「意外とできてるかも」と思い始めていた。
でもこの時は、まだ**“責任を正式に背負う覚悟”**まではなかった。
断る理由もなく、管理職の順番が回ってきた
30代に入り、上司から正式に「管理職になってほしい」と告げられた。
肩書きもつき、評価業務やマネジメントも正式に任されることになる。
迷った。正直、プレイヤーとして働くほうが気楽だったし、
人をまとめるよりも、自分で動いて成果を出すほうが得意だった。
それに、昇進しても劇的に給料が上がるわけではない。
むしろ責任と業務が増えるのは明らかだった。
でも、はっきり断る理由もなかった。
断れば「やる気がない」と思われそうだったし、
ここで引いたら後々やりにくくなるとも思った。
だから、「まぁ、やるしかないか」と受け入れた。
やってみて感じた“しんどさ”と“意外な楽しさ”
管理職になって最初に感じたのは、「自分の仕事に集中できない」というストレスだった。
部下の相談に乗り、業務の進捗を管理し、トラブルがあれば対応する。
その合間に自分の数字も追いかける必要がある。
「自分でやった方が早い」と思ったことも多かった。
人に任せる難しさや、思うようにいかないもどかしさに、何度もぶつかった。
でも──意外と、嬉しい瞬間もある。
部下が成果を出した時、自信をつけていく姿を見た時、
「相談してよかった」と言われた時は、やっぱり嬉しい。
しんどいけれど、プレイヤー時代にはなかった達成感の種類だった。
部下の成長や信頼に、救われる瞬間もある
ある後輩が、大きなミスをしたことがあった。
怒るよりも、一緒に問題を整理して、立て直しのサポートをした。
1ヶ月後、その後輩は見違えるように変わった。
のちに「あの時の対応で気持ちが変わった」と話してくれた。
正直、その言葉に救われたのは自分の方だった。
マネジメントは評価されにくいし、孤独も多い。
でも、こういう一言で報われることもある。
「役に立てた」という実感は、管理職を続ける理由の一つになっている。
理想の上司じゃなくていい。自分なりに向き合う
管理職になりたての頃は、「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎていた。
でも正直、それで空回りしていた部分も多かった。
今は少しだけ肩の力を抜いて、**“ちゃんとした上司”より“自分なりのスタイル”**を意識するようになった。
厳しさも、優しさも、バランスは人それぞれ。
ただ、誠実に向き合っていれば、それはちゃんと伝わると信じている。
完璧じゃなくてもいい。
必要な時に、必要な人に、ちゃんと関わる。
それが今の自分にできる、精一杯のマネジメントだ。
でも経験的には圧倒的にプラスだったと思う
管理職なんてやりたくなかった。
でも、この数年で得た経験は、間違いなく自分の財産になったと思っている。
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チームで成果を出す難しさと意味
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人を育てる苦労とやりがい
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他人の成長を支える責任と喜び
すべて、プレイヤーでは得られなかった感覚だ。
だからと言って、「自分は管理職に向いている」と胸を張れるわけじゃない。
正直なところ、今でもプレイヤーに戻りたい気持ちはある。
管理職の責任に疲れることもあるし、
「本当にこのままでいいのか」と迷うことも正直まだあり、未だ葛藤中である。